岐阜大学との共同研究
[概要]
あらゆる産業界がBCP(事業継続計画)を策定し、これらを産官学民が連携することにより、国土強靭化の一翼を担いたいと感じていた『一般社団法人岐阜レジリエンス推進協議会』。他方、地域防災における自助・共助・公助に関する研究により、個人の防災意識を高めるためには自らが勤務先のBCPに関与することが近道ではないかと模索していた『国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学流域圏科学研究センターの小山真紀准教授』。
両者は出会うべくして出会い、2つの目標を共有しました。1つ目は、「信頼性の高い防災情報をネットワーク化し、BCP策定率を上げること」、2つ目は、「フルクラウド化に対応したBCP策定システムを構築し、日本の防災を牽引すること」。です。両者を引き合わせてくださった同大学社会システム経営学環髙木朗義教授には深く感謝申し上げます。
しかしながら、依然としてわが国のBCP策定に関する現実は厳しいものがあります。帝国データバンクのBCP策定率調査によると、企業のBCP策定率は18.4%と低く、特に中小企業においては15.3%とさらに低くなっています。また、「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」と回答した『策定の意向あり』とする企業は5割を下回っており、その主な要因として、「策定に必要なスキル・ノウハウがないこと」があげられています。
策定ノウハウは、国の公表資料や専門書等で学習することができますが、専門性が高く、会社の実情に即したBCPの策定は容易ではないうえ、上級レベルの事業継続計画(BCP)に至っては、同業同地域のサンプル情報がなく、専門家の知見を借りる以外に有効な手段がありません。
また、上級BCP策定の成果と結びついた中小企業強靭化法による優遇措置(優遇税制、金融支援等)の活用に関する懸念もあります。優遇を受けるためには、50ページにも及ぶアナログな紙媒体で上級BCPを作成する必要がありますが、認定取得後の運用や見直しについては審査対象となっていません。加えて、紙媒体のBCPではPDCAサイクルの反映やその可視化がむずかしく、実行力に欠けるといった懸念があります。
さらに、実際の策定において最も経営者が頭を抱えるのが、代替戦略に必要な同業他社を探し出すことであります。実際に提携先を見つけることができたとしても、災害によって一度離れた顧客が戻らない不安や信用問題がついて回ります。また、膨大な費用負担も経営者を悩ませます。国や県が提供するリアルタイム情報が無料であっても、BCP策定に係る専門家への委託料や安否確認サービス等はいずれも高額であり、中小企業のBCP策定への障害になっています。
そして、情報の分散という課題もあります。BCPは定期的に見直す必要があるものの、策定のベースとなる情報入手先や連携先はバラバラであり、多くの労力を要する現状は、策定を煩雑にするだけでなく、策定したBCPの有意性を保ち続けることを困難にしています。
このほど、こうした課題を解決するために、岐阜大学との共同研究を進め、チャットボットやヒント表示を通じて、あらゆるノウハウを搭載したTOTONO-Lシステムを完成させました。具体的には、BCP策定業務の他、平時の教育・訓練、見直しといった運用業務をフルクラウド化し、事業継続マネジメント(BCM)の可視化・連携化を実現しています。
今後は、中長期的に利用者増を図りつつ、防災ビッグデータの利活用に資してまいりたいと思います。
[共同研究テーマ]
題目 | BCP策定システムのフルクラウド実装に関する指導・助言(学術コンサルタント) |
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目的及び内容 |
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岐阜大学の担当者 | 小山 真紀 准教授(流域圏科学研究センター) 髙木 朗義 教授(社会システム経営学環) |
実施期間 | 2022年6月20日~2023年3月31日 |
引用:BCP策定率の参考:帝国データバンクの調査(https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20230626.php)